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Title: 中級最終試験 と PACHON初訪問

一日や二日で急激に涼しくなると
飛行機で一気にどこかの外国に来たみたいな感じ
真冬に訪れたロンドン、パリ、アムステルダム
ハワイからシアトルに越した時
三年過ごしたロス・アンゼルスの冬もまたこんな気候であった
澄んだ冷たい空気に呼び起こされる過去の異国の情景
そしてまたいつの日にか、今日のこの感じをどこかの国で想い出す


中級コースの最終試験
三つ与えられたメニューの内から、なんと一番作業量の多いものが当たってしまい
初めはついてないな~と思っていたが
途中から逆に、これでパスできたらちょっとは自信がつくかな?
と気持ちを入れ替え、どうにか最後まで任務を遂行
前に一度実習で作った時は初めてにも関わらず、手際よく短時間でスムースに出来たが
今回は試験だというだけで気が高ぶり、一回目よりも要領は悪く仕上がりも今一つと
全体的の自己評価は必ずしもベストとは言えない結末にに
だが先生の評価は、ソースの煮詰め加減や盛付け以外、特に悪い所は指摘されず
自分を含めクラス全員が合格、上級クラスへの昇進が確定した、ホッ
先ずはめでたしめでたしと


パッションへ
試験の後、予め予約を入れておいた学校から通りを挟んで真向かいの
古典的フランス料理の老舗、代官山「PACHON」へと、みんなでお祝いに伺った

こちらのオーナーシェフのアンドレ・パッションさんは
うちの校長先生と大の仲良しで、事に触れてはこの店の話を聞いていたので
今回の訪問には大きく胸を膨らませていた
パッションさんなんて馴れ馴れしく呼んでいるが
実は M.C.F.(メートル・キュイジニエ・ド・フランス)という
フランス本国から世界の最優秀料理人にのみ与えられる名誉ある称号を得られている方で
世界では370人、日本国内には僅か7名しかおらず
パッションさんはその日本支部の代表を務めているとても権威のあるお方で
フランス農事功労章オフィシェ受章や、国家功労章も受勲されている

1970年、大阪万国博覧会にて「レストラン・デュ・カナダ」のシェフとして初来日
六ヶ月のお祭り騒ぎの後、仏へ帰国する直前にDONQの藤井幸男氏と偶然出会う
同氏の勧めでそのまま京都の「ラングドック」という店でシェフを務めることとなり
その翌年、藤井氏と共に六本木の名店「イル・ド・フランス」をオープンさせ料理長となる

1984年、ポール・ボキューズが運営していたお店が倒産/閉店となり
その跡地に訪れたパッション氏は解体中のまま作業が滞っていた荒れ果てたスペースに遭う
唯一手付かずに残されていたのはフランスの修道院から持ち入れられた320年前の暖炉
家主がパッションさんに店の引き継ぎを偶々持ちかけたことで
「PACHON」は偶然にも開店する運びとなった


それから26年後のある日、僕たちは初めて訪問した
女子群は着替えやら何やらで時間がかかる為
我が校長/ベルナールシェフに促され、自分はひと足お先に入店することに
温かく迎え入れてくれたアンドレ氏の息子さんと暫しの雑談
アンドレ氏が大阪万博でシェフをしていた店でレジをされていた女性との間に出来た
その息子さんから直接、お店の事など興味深い話しを伺えた

PACHON の料理は正統派クラッシック・フレンチ
モダンなアレンジや他のスタイルを取り入れた融合的要素は皆無
つまり自分がいつも学校で慣れ親しんでいるメニューや調理法ばかり
折角なので最近クラスで作ったばかりの鴨のロティや牛頬肉のブレゼを食べさせて頂いた
あまりの美味しさにいかに自分の料理が未熟で洗練されていないものかと
そう思い知らされる本物のフレンチを堪能することができた
逆に云えば、本物を知らずして技術の向上はあり得ぬということでもある
先生シェフが口をすっぱくして食べ歩きなさいと云っている真意はそこにあるのか
ただ一つ、ここにきて漸く美味しい仏料理とそうでないもの(自分の)
の、違いが解り始めてきたのはそれなりの成果ともいえる

pacion.jpg


スタッフの方達の店全体に行き渡るホスピタリティも文句の付けようがない
品格はあるが気取らないフランクな物腰、そのバランスが心地よい
アンティーク調に設えられた調度品に囲まれながらも
部屋の奥隅にある、古の暖炉から聞こえてくるパチパチと立ち昇る炎のせいか
不思議と心も和み、肩肘張らずにくつろいだ雰囲気に包まれ
そして実際にその暖炉で調理された料理が、体の中からも温めてくれる

学校に入り、基礎ではキッシュやフリカッセ
初級ではポトフやカスレなどといった庶民的な料理に数多く触れ
フランス料理=小難しい高級料理というイメージは奇麗に払拭された
この店は、最近自分が思い描いていた本来のフランス料理店のイメージと
しかと合致していて、このような店が、しかも自校の目前にあるものかと
心做し嬉しく思った

明日は中級の修了式、そして明後日からは上級コースが始まる
学校に入りたての頃、上級の生徒達の着ているコックコートの使用感と
真っ新な自分のそれとを見比べ、ある種の隔たりを感じたことを思い出した


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赤ピーマンのコンフィと秋ジャケで作ったピサラディエール
先生シェフ達がダメだしをしている姿が容易に想像できるる

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