Media
September 2010  Back to Top
マグロのアンチョビ入り風味、タプナード入りジャガイモのラヴィオリ ウニのエミュリシオンソース
中級最終試験 と PACHON初訪問

一日や二日で急激に涼しくなると
飛行機で一気にどこかの外国に来たみたいな感じ
真冬に訪れたロンドン、パリ、アムステルダム
ハワイからシアトルに越した時
三年過ごしたロス・アンゼルスの冬もまたこんな気候であった
澄んだ冷たい空気に呼び起こされる過去の異国の情景
そしてまたいつの日にか、今日のこの感じをどこかの国で想い出す


中級コースの最終試験
三つ与えられたメニューの内から、なんと一番作業量の多いものが当たってしまい
初めはついてないな~と思っていたが
途中から逆に、これでパスできたらちょっとは自信がつくかな?
と気持ちを入れ替え、どうにか最後まで任務を遂行
前に一度実習で作った時は初めてにも関わらず、手際よく短時間でスムースに出来たが
今回は試験だというだけで気が高ぶり、一回目よりも要領は悪く仕上がりも今一つと
全体的の自己評価は必ずしもベストとは言えない結末にに
だが先生の評価は、ソースの煮詰め加減や盛付け以外、特に悪い所は指摘されず
自分を含めクラス全員が合格、上級クラスへの昇進が確定した、ホッ
先ずはめでたしめでたしと


パッションへ
試験の後、予め予約を入れておいた学校から通りを挟んで真向かいの
古典的フランス料理の老舗、代官山「PACHON」へと、みんなでお祝いに伺った

こちらのオーナーシェフのアンドレ・パッションさんは
うちの校長先生と大の仲良しで、事に触れてはこの店の話を聞いていたので
今回の訪問には大きく胸を膨らませていた
パッションさんなんて馴れ馴れしく呼んでいるが
実は M.C.F.(メートル・キュイジニエ・ド・フランス)という
フランス本国から世界の最優秀料理人にのみ与えられる名誉ある称号を得られている方で
世界では370人、日本国内には僅か7名しかおらず
パッションさんはその日本支部の代表を務めているとても権威のあるお方で
フランス農事功労章オフィシェ受章や、国家功労章も受勲されている

1970年、大阪万国博覧会にて「レストラン・デュ・カナダ」のシェフとして初来日
六ヶ月のお祭り騒ぎの後、仏へ帰国する直前にDONQの藤井幸男氏と偶然出会う
同氏の勧めでそのまま京都の「ラングドック」という店でシェフを務めることとなり
その翌年、藤井氏と共に六本木の名店「イル・ド・フランス」をオープンさせ料理長となる

1984年、ポール・ボキューズが運営していたお店が倒産/閉店となり
その跡地に訪れたパッション氏は解体中のまま作業が滞っていた荒れ果てたスペースに遭う
唯一手付かずに残されていたのはフランスの修道院から持ち入れられた320年前の暖炉
家主がパッションさんに店の引き継ぎを偶々持ちかけたことで
「PACHON」は偶然にも開店する運びとなった


それから26年後のある日、僕たちは初めて訪問した
女子群は着替えやら何やらで時間がかかる為
我が校長/ベルナールシェフに促され、自分はひと足お先に入店することに
温かく迎え入れてくれたアンドレ氏の息子さんと暫しの雑談
アンドレ氏が大阪万博でシェフをしていた店でレジをされていた女性との間に出来た
その息子さんから直接、お店の事など興味深い話しを伺えた

PACHON の料理は正統派クラッシック・フレンチ
モダンなアレンジや他のスタイルを取り入れた融合的要素は皆無
つまり自分がいつも学校で慣れ親しんでいるメニューや調理法ばかり
折角なので最近クラスで作ったばかりの鴨のロティや牛頬肉のブレゼを食べさせて頂いた
あまりの美味しさにいかに自分の料理が未熟で洗練されていないものかと
そう思い知らされる本物のフレンチを堪能することができた
逆に云えば、本物を知らずして技術の向上はあり得ぬということでもある
先生シェフが口をすっぱくして食べ歩きなさいと云っている真意はそこにあるのか
ただ一つ、ここにきて漸く美味しい仏料理とそうでないもの(自分の)
の、違いが解り始めてきたのはそれなりの成果ともいえる

pacion.jpg


スタッフの方達の店全体に行き渡るホスピタリティも文句の付けようがない
品格はあるが気取らないフランクな物腰、そのバランスが心地よい
アンティーク調に設えられた調度品に囲まれながらも
部屋の奥隅にある、古の暖炉から聞こえてくるパチパチと立ち昇る炎のせいか
不思議と心も和み、肩肘張らずにくつろいだ雰囲気に包まれ
そして実際にその暖炉で調理された料理が、体の中からも温めてくれる

学校に入り、基礎ではキッシュやフリカッセ
初級ではポトフやカスレなどといった庶民的な料理に数多く触れ
フランス料理=小難しい高級料理というイメージは奇麗に払拭された
この店は、最近自分が思い描いていた本来のフランス料理店のイメージと
しかと合致していて、このような店が、しかも自校の目前にあるものかと
心做し嬉しく思った

明日は中級の修了式、そして明後日からは上級コースが始まる
学校に入りたての頃、上級の生徒達の着ているコックコートの使用感と
真っ新な自分のそれとを見比べ、ある種の隔たりを感じたことを思い出した


ps.jpg

赤ピーマンのコンフィと秋ジャケで作ったピサラディエール
先生シェフ達がダメだしをしている姿が容易に想像できるる

しめじとエリンギ の アーリオオーリオ

mushroom1.jpg

そろそろキノコ好きにはたまらない季節、ってなかなか秋っぽくなってくれない
キノコ狩りには興味はあり、だが未だに未体験
自分で採った採れたてのキノコで料理を作る
たったそれだけのことだけど、それだけで充分満たされることもある


材料:
オリーブオイル 適量
ニンニク 1片
鷹の爪 適量
しめじ 適量
エリンギ 適量
塩胡椒 適量
白ワイン 適量
イタリアンパセリ 適量

作り方:
パスタをお湯1Lに対して10gの塩で茹でる
ニンニクを1mm厚にし、オリーブオイルで焼き色がつくまで火を通し、一旦鍋から出しておく
オリーブオイルの粗熱をとり、赤唐辛子を入れゆっくりと熱し、黒っぽく変色する前に
イタリアンパセリのコンカッセとキノコ類を入れ強火で一気に火を入れる
キノコに半分くらい火が入ったら、白ワインを入れ酸味をとばし、塩コショウをする
そこへパスタの茹で汁を少量入れ、水分と油分を乳化させ
固めに茹でたパスタを入れ軽く和え、皿に盛ったら出来上がり

メモ:
茹で汁とオリーブオイルの乳化はパスタの湯を軽めに切り
油と和える時に勢いよく混ぜ合わせ、トロりとさせるのも一つの手
このまったりとまとわりつく口当たりがアーリオオーリオの好きなところ


machine.jpg

替刃のパッケージを何気に眺めていたら
なんと1.5mmよりも細い0.8mm幅が存在するのを発見
ただし日本の正規の資料には載っておらず、生産中止か日本未入荷のものか
気になるなぁ

width.jpg


なんて言ってられない、今日、明日は中級コース最後の筆記/実習試験
用意周到に挑まないと本気でパス出来ないことも
そして年末いっぱいまでの上級コースを予定通り終わらせたら
丸一年四コースのプログラム、料理ディプロムを獲得
そしてその後、優秀な成績を取得した者のみに与えられる現場での研修プログラムもある

思っていたより大変でやり甲斐があったフランス料理講座
残り三ヶ月となると既に名残惜しい
気持ちを引き締め、悔いのないよう全うしたい

娼婦 の パスタ

meddish2.jpg

正式名称はスパゲティ・アッラ・プッタネスカ、ナポリ発祥のパスタ

その名前の由来は、娼婦だったらこんなパスタを作るであろう、というものから
娼婦が客引きのために作っていた、その独特の香りが娼婦を連想させたから
など諸説があるが、最も有力なのは当時のイタリアの売春宿の営業体制に起因する

この料理がイタリア中に広まったのは1960年代、日本では食の欧米化が始まった頃
当時のイタリアの売春宿はその県によって運営されていた
国や県の元で働く者は厳しく時間等が管理されていた為
娼婦は健全な市民の目に触れぬよう、買い物は週に一度しか許されていなかった
そのため家に常備されている保存食や残り物を使って簡単に作れるもの
安価で入手できる地中海の特産物の寄せ集めで短時間に作れる料理、が定着して
この「娼婦のパスタ」になったという説

インパクトのある名前の割には、どちらかと云うと地味に美味しい料理
地味だけどオリーブやアンチョビは風味もうま味も塩気もしっかりと効いているので
トマトの酸味とタマネギの甘味と全てが一緒になると
複雑でバランスのよい、いわゆる地中海の味となる
最近ではトマトもオリーブもみじん切りにするのが現代風のようだが
今回は刻まずにちゃんと手を抜き、時間を短縮して作ってみた
そういった意味ではわざわざ生パスタで作らずに、あえて乾燥麺で作った方がそれっぽいのか
これは何度食べても飽きなそう、もっと頻繁に我が家に取り入れてみようか


材料:
オリーブオイル 適量
ニンニク 1片
タマネギ 1/2個
赤唐辛子 1本
チェリートマト 5~6個
種抜きオリーブの実 7~8個
アンチョビ 1切れ
バジリコ 適量
生パスタ 適量

作り方:
オリーブオイルにニンニクのアッシェを入れ、香りが立ったらタマネギのアッシェも入れスエ
タマネギが透明になり甘味がでてきたらオリーブと1/2カルチェにしたトマトを入れ塩胡椒
(通常はケッパーがここで入るがあまり好みではないので今回は入れずに)
アンチョビをほぐし入れ全体が馴染んだら保温
パスタは茹でて水気を切ったら、少量の茹で汁と共に鍋に戻し
オリーブオイルと塩コショウをしてよく混ぜ、油と水を乳化させてからソースの中に入れる
エマンセにしたバジルと全体をサッと和えたら出来上がり


medpasta.jpg

パスタは2mm幅で作ってみたら、やはり太過ぎて存在感があり過ぎた
存分に生パスタ感を楽しめるから美味しいはオイシイのだが、このメニューにはやや太い

厚さ1mmくらいに伸してから2mmに通すべきか
いや、それだったら最初から1.5mmに通せばいいのか

トマトソース の パスタ

pomodoro1.jpg

年間を通して我が家で一番食べる料理、パスタ・ポモドーロ=トマトソースのパスタ
お肉も魚介も一切入っていない、最もシンプルだけど味わい深い一皿
これを遂に生パスタで作れるようになったのは心底嬉しい限り


材料:
オリーブオイル 適量
ニンニク 1/2片
ローリエ 1/2枚
イタリアンパセリ 適量
トマト缶 1/2缶
塩コショウ 適量
生タイム 適量(乾燥で代用可、あるいはなくてもよい)
生バジル 適量(乾燥で代用可、あるいはオレガノでもよい)
生パルメザン 適量(乾燥で代用可)
生パスタ 適量(乾燥麺で代用可)


作り方:
お湯を沸かし塩を入れパスタを茹でる、乾麺の場合は表記時間より20~40秒ほど短めに
(ソースの濃度により茹でる時間を調整)

冷たいフライパンにオリーブオイル、ニンニクアッシェ、ローリエを入れ弱火にかける
ニンニクの一番小さい欠片に色がつき始めたら、イタリアンパセリのコンカッセを入れ
一息ついてシュワッとしたら一旦火から降ろし、トマト缶とタイムのコンカッセを入る
トマトの塊を潰しながら中強火にかけ、水分をとばす
しゃばしゃばな状態からとろーりとソースっぽくなり始めたら火を弱め、気持ちゆるめの濃度にし
塩コショウでアセゾネして保温、途中パスタの茹で汁を少量足す

パスタが茹で上がったら水気を切りソースに入れる、バジルのコンカッセも同時に入れ火を止める
全体を大きく混ぜ、オリーブオイルとパルメザンをおろし入れたら軽く和え
皿に盛ったら出来上がり


メモ:
イタリアでは塩気のあるものとないものを混ぜ合わせる習慣がないので
パスタを茹でる時はしっかりと塩を効かせ、パスタにも味を付ける
生パスタの茹で汁は蕎麦湯のように粉の香りが豊かなので、ソースに少量加え風味を増す
トマトは煮込んで味を濃縮するというよりは、フレッシュ感を残しつつ余分な水分をとばす感じ
生のトマトで作る時はハチミツ小1でうま味をだし、トマトピューレ小1で赤味をつける
最後に入れるバジリコは風味をとばしたくないので、刻んだら直ぐに入れ、入れたらすぐ皿に盛る
パスタはソースと絡めるとソースの水分をかなり吸うので
それを考慮してパスタは固めに茹で、ソースはゆるめに仕上げる

pomodorocan.jpg

トマト缶
通常日本に出回っているイタリアン・トマトの水煮缶はロマーノ種などの
サンマルツァーノという品種と他の品種を交配させたものが一般的
しかし本当に美味しいのはやはり混じり気のない、純粋なサンマルツァーノ種

イタリア南部にあるカンパニア州、ナポリ県のサレルノ地区はイタリア屈指のトマトの名産地
そのそばにあるヴェスヴィオ火山付近に位置するサンマルツァーノという村がその名の由来

この品種、一時期は伝染病で生産量が激減したため品種改良を重ね
質を落として生産性を高めた交配種が主流となった
その一方、原種はほぼ絶滅しかけたが、最近では生産量はわずかながらも復活し
アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノという産地でD.O.P.認定され少量生産されている
一般にも流通してはいるが、その中の最良のものは日本に輸入されているのだとか

イタリアン・トマト特有の細長い形状をしており、肉厚で水分が少なく加熱料理に適している
酸味と甘味のバランスがよく、旨味成分のグルタミン酸が豊富、加熱すると独特の粘性を持つ

本家イタリアの家庭でも一般的に使われていないこの希少なサンマルツァーノ種
我が家ではここ10年ほどこの品種のみしか使っていない
年に数回24缶入りを購入し、常にストックを切らさないようにしている
家で食べるトマトソースが、他のどの店よりも美味しく感じてしまうのは
このサンマルツァーノのお陰、決して自分の腕ではないぃ

1 | 2 | 3
Profile

kenny profile

Calender
loading ...
Recent Entry
Archives

KENNICAM / COPYRIGHT © KENNICAM. ALL RIGHTS RESERVED.